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【ニュース】子どもの格差社会
格差社会の影響を一番受けているのは、子どもかもしれない。生まれたときから、いや生まれる前から、子どもは格差の厳しい現実にさらされている。 たとえば、地域間格差。妊婦健診への公的助成の回数は自治体によって大きな差がある。もっとも多い東京都23区の大半が14回分なのに対し、少ない自治体では5回分しか助成されない。それも、厚生労働省が「少なくとも5回程度は公費負担が原則」と通知を出したことで、今年4月から5回に引き上げる自治体が相次いでいるが、さらに上乗せしているところもあるのだ。 子どもの医療費も、小学校に入るまで助成する自治体もあれば、中学校卒業までのところもある。親にしてみれば「どこで産むか」によって、出産・育児にかかる費用は大きく違ってくる。 そして、子どもの格差を決定的にするのが教育費だ。実は、先進国の中で日本は教育に対して公的にもっともおカネをかけない国の一つだ。教育費の負担は、家庭に重くのしかかることになる。幼稚園から高校までの15年間、すべて公立に通っても571万円の教育費がかかる。すべて私立となれば、それが1680万円にも跳ね上がる。その差はなんと約3倍だ(文部科学省「子どもの学習調査」)。 さらに国立大学に自宅通学で4年間通えば合計418万円で済むが、アパートを借りて私立大学に通うと、4年間で989万円かかる(日本学生支援機構「学生生活調査」)。こうした学費負担は、結果的に親の収入の違いによる大学進学率の格差をもたらしている。
受験に湯水のごとくおカネを注ぎ込み小学校から私立に通わせる家庭もあれば、経済的理由から大学進学を断念せざるをえない家庭もある。教育の機会不平等が、子どもの将来格差を生み出し、その格差がまた世代を超えて継承されていく。その現実を直視する必要がある。
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教育の機会不平等と同じように、保育の現場においても、保育の機会不平等が起こっている。
保育業界には、大きく分けて認可保育施設と認可外保育施設の2つがある。認可保育施設というのは、いわゆる認可保育園というもので、公立の認可保育施設と私立の認可保育施設とに分かれる。公立・私立いずれも国からの補助金で運営されている。つまり認可保育施設というのは国民の税金によって維持されているわけで、財政的な安定性は確保されている。
一方、認可外保育施設は、ベビーホテルという名称で代表されるように、いわゆる無認可保育園のことで、国からの補助金は基本的に一切ない。認可外保育施設のなかにも東京都や神奈川県横浜市・相模原市のように、一定の基準を満たしている認可外保育施設を認証もしくは認定し、助成金を支給している地域もある。これは東京都や神奈川県などの待機児童が多い地域において、永久的ではなく、暫定的な解決への対策とみてよいだろう。
これら認可保育施設と認可外保育施設の2つで大きな不平等が起こっている。認可保育施設への入園には、保護者は市役所や区役所へ入園の申込を行う。市役所や区役所が保育施設への入園を承認した場合、市役所や区役所側は措置として保育施設を指定する。保護者は通わせたい保育施設の希望を出すことはできても、自分で直接保育施設に申し込んだり選ぶことはできない。最も大きく異なるところが、応益負担であるところだ。保育料は、保護者の前年度の収入によって設定される。低所得者は保育料が0円になる可能性もあるし、それなりに稼いでいる保護者の保育料はそれなりに高くなる。ここが一番の問題であるとの指摘が多い。応益負担は、保護者の収入に応じて保育料が変化するため、保護者が支払う保育料は1人1人異なる。同じサービスを受けているにも関わらず、同じ対価を支払っていないということになるのだ。保育施設がもしくは保育士が、保護者の支払う保育料の大小に応じてサービスを変化させるということはないので、平等性に欠けるということは間違いない。ただし、これは全国の子どもや保護者がすべて福祉サービスを受けられているのなら、応益負担であってもまだ納得がいくかもしれない。上記したように地域によっては待機児童が多く、認可保育施設を利用できない保護者も多いのだ。そういった激戦地区に住む保護者は、場合によっては低所得者であっても母子家庭・父子家庭であっても利用できないこともある。他の待機児童がない(定員割れしている)地域の保育施設においては、「保育に欠ける」という一定の条件さえ満たしていれば、裕福な家庭の子どもも通うことが可能だ。ところが、低所得者であっても母子家庭・父子家庭であっても住む地域性によって入園できないとなれば、この不平等はやはり納得できるものではないだろう。
一方、認可外保育施設いわゆる無認可保育園は、応益負担ではなく、だいたいが年齢や月齢に応じて保育料は一律だ。同じサービスを受ける以上は同じだけ対価を支払うことになる。それは裕福な家庭であろうと貧しい家庭であろうと同じで、平等だ。もちろん低所得の保護者にとっては認可外保育施設に通わせる場合、それなりの保育料を支払わなければならないわけだから、経済的負担は大きいことは言うまでもない。

では、どうしたらこの不平等を平等化した上で、低所得の保護者に保育サービスがいきわたるようにできるだろうか。
すべての保育施設を認可保育施設にすることがまず1つの解決法となりそうだが、国の財源における福祉にあてられる予算が現時点で十分とはいえない。そのなかですべての保育施設を認可保育施設とすることは、幼保一元化が進まないかぎりは現実的には難しい。厚生労働省(保育施設)と文部科学省(幼稚園)の予算の取りあいや派閥争いによってなかなか幼保一元化は進まないが、教育の一本化は絶対に必要だ。
逆に、すべての認可保育施設を廃止し、すべてを認可外保育施設にすると、不平等問題は決着する。不平等問題は解決するが、低所得者が利用できる保育施設が限られてしまう。そこで、低所得の保護者や母子家庭・父子家庭には、それぞれの家庭単位に直接児童手当として支給されるようにする。そうすれば、ある一定のサービスを保護者が選択することは可能になる。もちろん、これまで英会話や体操などを保育とあわせてサービスの売りにしてきた保育施設などは保育料が高い傾向にあるが、サービスが高ければそれだけの対価を支払わなければならないというのは世の常識。義務教育の小中学校があって平等性は保たれているが、私立小中学校に通わせるかどうかは保護者の選択(あるいは収入)しだいというのは同じこと(これはこれで今回のニュースの問題点ではあるが)。最低限の児童手当が支給されることで、保護者の選択の幅が広がることは間違いない。
ところが認可保育施設を廃止すると、一定のレベルが保たれないという見方もある。当然、これまで認可保育施設に直接支給されていた補助金はなくなるわけだから、保育施設に問われるのは経営力ということになる。これまで税金に頼ってあぐらをかいていた保育施設にとっては苦しいところだろう。保護者が選ぶという状況となれば、経営力のない保育施設は淘汰されていくことになる。それぞれの保育施設が特色を出したり、顧客をどう獲得するかという競争が起こるのは必至だ。保護者もバカではない。選ぶ目をもつことで、自ら選んだ保育施設への意識の高さと子どもへの責任感は増すこともあるだろう。そのことで保育レベルの向上も同時に見込まれるが、力がなく淘汰されていく保育施設も相当数出てくるだろう。その問題を解決するのは、それこそ行政の対策なのではないだろうか。つまりセーフティネットだ。一定の環境や設備・保育のレベル・安全性などをしっかりと担保できるよう、行政側が外側から関わっていくことが必要だ。

格差問題は、少子化問題とともに先進国病ともいわれている。
資本主義国家日本において、他の資本主義国家と同様に格差はあってしかるべきだと考える。でなければ資本主義の意味もない。社会主義でないかぎりは完全な平等というのは存在しない。上記ニュースでも、問題なのは格差そのものではなく、教育にお金がかかりすぎるという点と、お金(保護者の収入)によって子どもの学力や進路に大きな影響を与えている点なわけだ。格差を是正するのではなく、教育にお金がかからない仕組みにするか、もしくはかかる教育費を低所得者でも捻出できる仕組みにしなければならない。保育業界においては、すべてを公的なものにすることは現実的に難しいため、これまでのように箱物(保育施設)に税金を投入するのではなく、低所得者で生活にゆとりのない保護者や母子家庭・父子家庭の保護者に対してピンポイントで補助する方が、少なくとも機会の平等性は保てるはずだ。
これは医療費などでも同じことがいえる。妊産婦の医療費、出産時の医療費、育児にかかる医療費などバカにならない。実際には補助される仕組みもあるにはあるのだが、広く知られておらず、依然として子どもの出産や子育てにはお金がかかるという庶民の意識は高い。これらも医療費がかからない、もしくはかかっても補助されるという仕組みを徹底していかなければ、いつまでたっても格差問題や少子化問題を改善していくことにはならない。

(2009年5月16日)【穴山安治(小助)】

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小助
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1981/03/10
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保育士
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考古学
自己紹介:
法学部法律学科を卒業後、小中高校生への学習指導講師を経て、幼少期からの夢の保育業界に転身し6年目。労務管理を得意とする異色の保育士として施設長経験も有り、現在は知識・技術・経験を活かし講師として労務と保育を説く。
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